生身の身体を被写体とした〈Porcelain Nude〉シリーズで森田恭通が目指したのは、限りなく美しい曲線を切り取ることだった。陶器のような人体の断片に、神の差配した美を見た。翻って新作〈Rodin x Morita〉では、人工物であるオーギュスト・ロダンの彫刻を同じ視線で切り取っている。だが、支持体の上に表れたのは、むしろ生々しい感情だった。物言わずそこに在る“身体”から発せられる欲望や怒りや悲しみは、モノクロームによって強調され、観る者を感情の坩堝へと誘い込む。同時に「人間よりも人間らしい姿」と森田が呼ぶ大理石の彫刻には、経年の染みや汚れがあり、人は表層や形によって感情が揺さぶられることも可視化している。美しさを求めて自然光のみで写した細部から、浮かび上がったのは、人間。まるで慰撫され、汗をかいたような彫刻の肌理に、人間の営みのおかしさが宿っている。
© Yasumichi Morita/Musée Rodin, Paris