the exhibition “Brain” Yasumichi Morita
SCÈNE
東京都港区南青山3-15-6 Ripple Square D-B1
Open:12:00 – 7:00p.m. ※Appointment only
Closed:Sunday, Monday, National holidays
Appointment: exhibition@scenetokyo.com
・ご来場の際にはマスクのご着用をお願いいたします。
・入り口にて、手指消毒、検温のご協力をいただいております。
―展覧会に寄せてー
僕は、これまで35年間デザイナーとしてキャリアを積み上げてきて
世界中でたくさんのプロジェクトを手がけさせてもらいました。
デザインの仕事は、クライアントの描く夢を支え、期待を超える形を作り出すことだと僕は思っています。
そしてその仕事を僕は大好きで、クライアントやスタッフ、そこに来てくださる人々の喜ぶ顔を思い浮かべ、
今日もワクワク妄想しながらプロジェクトと向き合っています。
一方で、いつからか、僕自身の表現を追求してみたいと思うようになり、
5年前、新たな挑戦として、腰を据えて写真と向き合おうとも決めました。
日本ではデザイナーとして僕を認知していただいている分、
国内で作品を発表しても「デザイナーの森田が写真を撮ったらしい」と、
良くも悪くも広まっていくのではないかと思い、
写真家・森田恭通のスタートを2015年11月、パリで切ることにしました。
そこには自分に甘えを許したくなかったのと、
純粋に作品を見て、僕のことを知らない人に評価してもらいたいという思いがありました。
そうして満を持して迎えた2015年11月13日パリでの展覧会オープニングの日に、
会場のすぐそばで大規模なパリでの同時多発テロが起き、
深い哀しみに覆われたまま、僕の展覧会も1日のみで閉鎖を余儀なくされました。
しかしながら、その1日に訪れてくださったパリの人々が覚えてくださったり、
評価をしてくださったりと、それ以来昨年まで毎年パリで展覧会を開き、得難いご縁に恵まれてきました。
今年は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、パリでの展覧会は延期となってしまいましたが、
やはりどこかで発表し、皆さまに作品をご覧いただきたいという気持ちは拭えずにおりました。
そんな折に、写真家として一歩を踏み出した年からご一緒しているSCÈNEさんで
久しぶりに作品を展示いただけることとなり、大変嬉しく思います。
こうした折ではありますが、会場では感染対策を徹底され、換気もできる限り行ってくださっており、
アポイント制でのご案内とさせていただいております。
どうかお越しの際は、マスクの着用、手指の消毒と検温のご協力をお願いします。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
森田恭通
被写体には、写真家の自己が投影される。逃れようのない写真の本質を逆手に取って、森田恭通は自己の脳内を可視化する試みを行う。
そのために選んだ被写体は、「本」だった。池波正太郎のエッセイからアーティストの作品集まで、森田が心酔する本を積み重ねて醸される、彫刻のような存在感。
常に変化を続ける脳内が、ある一瞬には、そのようにしてあったのだろう。流動する思考の固定化もまた、写真が持つ重要な機能だ。
二次元の集積たる本を層として積み重ねることで、三次元の実像を作り出し、再び二次元の印画紙に封じ込める。
その往来によってあぶり出される森田の脳内。モノクロームによって抽象化され、際立つタイポグラフィーやブック・デザインが、伸縮する思考を雄弁に語る。