Crystallization

森田恭通が写真家として選んできた被写体は常に−女性の身体のラインも、咲き乱れる花も−実生活において愛するものだった。そこには純粋な好奇心があり、倒錯した美意識がある。新たにミクロの世界へクローズアップして写し出したのは、シャンパン。浴びるように飲んできた黄金の泡を、プレパラートの上にのせて水分を飛ばし、結晶化させて写し取った。人々を魅了する味は、まさしく天の配剤として、人知の及ばないデザインに彩られていることを発見する。まるで宇宙のようであり、人類の細胞のようでもある結晶。「POWERS OF TEN」によってイームズ夫妻が映像化した神の視点は、シャンパンの中にも注がれる。気象条件によってシャンパンの味が毎年異なるように、撮影日の気候や乾燥状態によって結晶の形状もまた異なる。そこには、自然の美と呼ぶべきものがある。